純米酒とは

純米酒は、醸造アルコールを一切添加せず、米・米こうじ・水だけで造られた日本酒です。清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)で定められた特定名称酒の一つで、米そのものの旨味とコクを味わえる日本酒として親しまれています。

米・米こうじ・水による酒造りは奈良時代にはすでに行われていました。江戸時代には品質保持のために焼酎を加える柱焼酎の技法も広まりましたが、あくまで米由来の焼酎を少量加えるものでした。戦時中に醸造アルコール添加が国策として導入され、戦後の米不足の時代にはさらに大量の醸造アルコールと糖類を加えた三倍増醸清酒が主流となり、米だけで造る酒は一時ほぼ姿を消しました。

1973年(昭和48年)に純粋日本酒協会が発足し、米・米こうじ・水のみで造る純米酒の復活と普及を目指す動きが本格化します。1980年代の地酒ブームで純米酒が再評価され、1990年の製法品質表示基準で特定名称酒として正式に位置づけられました。当初は精米歩合70%以下の要件がありましたが、2004年に撤廃され、現在は精米歩合に関わらず、米・米こうじ・水だけで造った清酒が純米酒を名乗れるようになっています。

米・米こうじ・水による酒造りは奈良時代に始まり、江戸時代には品質保持のため米由来の焼酎を少量加える柱焼酎が広まったが、戦時中の醸造アルコール添加と戦後の三倍増醸清酒の普及で米だけの酒は一時姿を消した。1973年の純粋日本酒協会発足で復活運動が始まり、1980年代の地酒ブームで再評価され、1990年に特定名称酒として位置づけられ、2004年に精米歩合70%以下の要件が撤廃されて現在に至る

純米酒の定義と原料

純米酒を名乗るには、清酒の製法品質表示基準で定められた以下の要件を満たす必要があります。

  • 白米、米こうじ及び水を原料として製造した清酒であること
  • 白米は、農産物検査法により3等以上に格付けされた玄米またはこれに相当する玄米を精米したものであること
  • こうじ米の使用割合が白米の重量に対して15%以上であること
  • 香味及び色沢が良好であること

純米酒の最大の特徴は、醸造アルコールを一切添加しない点にあります。醸造アルコールで味を整えたりキレを出したりできないぶん、米そのものの質と醸造技術が味わいに直結します。

純米酒の4分類と味わいの特徴

純米酒はさらに4種類に分かれます。どれも醸造アルコールを添加しないという共通点を持ちつつ、精米歩合や製法の違いによって味わいの方向性が変わります。

なお、製法品質表示基準で定められた特定名称は吟醸酒、純米酒、本醸造酒の3つです。純米吟醸酒・純米大吟醸酒は独立した特定名称ではなく、吟醸酒・大吟醸酒に「純米」の用語を併せて表示したものです。一方、特別純米酒は「特別純米酒」という名称が基準上で定められています。

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名称精米歩合味わいの傾向
純米酒規定なし米の旨味とコクが豊か
特別純米酒規定なし(もしくは60%以下)旨味がありつつキレも出る
純米吟醸酒60%以下吟醸香と旨味の両立
純米大吟醸酒50%以下繊細で華やかな香り
木のトレーに置かれた陶器の徳利と純米酒が注がれた猪口に柔らかな自然光が差し込む情景

純米酒

精米歩合の規定がなく、4分類のなかで最も自由度が高いカテゴリーです。精米歩合80%や90%のものも存在し、米の外側に含まれるタンパク質や脂質が残るぶん、旨味やコクが豊かに出ます。どっしりとした飲みごたえがあり、燗酒にすると味わいがさらにふくらみます。

この旨味やコクの背景には、醸造アルコールを添加しないことでアミノ酸の比率が高く保たれるという科学的な理由があります。日本酒に含まれるアミノ酸は、醸造の過程で米のタンパク質が麹の酵素によって分解されることで生まれます。醸造アルコールを加えるとこれらの成分が相対的に薄まりますが、純米酒ではそのまま残るため、濃醇で厚みのある味わいになります。

低精米で米の個性を前面に出したものから高精米でクリアに仕上げたものまで、多様な純米酒が登場しています。

特別純米酒

純米酒のうち、香味及び色沢が特に良好なものに「特別純米酒」の名称を用いることができます。ただし、なぜ特に良好といえるのかを、使用原材料や製造方法などの客観的事項をもってラベルに説明表示する必要があります。精米歩合を根拠とする場合は60%以下に限られます。

説明表示の内容は蔵によってさまざまで、たとえば精米歩合60%以下を根拠とするもののほか、酒造好適米の山田錦100%使用を根拠とするもの、生酛仕込みや木槽搾りといった特殊な製法を根拠とするものなどがあります。ラベルに書かれた説明表示を読むと、その蔵が何を「特別」と考えているかがわかるため、純米酒選びの手がかりになります。

純米酒よりも雑味が抑えられ、旨味を残しながらもすっきりとした味わいになる傾向があります。

純米吟醸酒

吟醸酒のなかで、醸造アルコールを添加せず米・米こうじ・水のみを原料として造られたものが純米吟醸酒です。吟醸酒は精米歩合60%以下の白米を原料とし、吟味して製造した清酒で、固有の香味及び色沢が良好なものを指します。吟醸酒由来の華やかな香りと、純米酒ならではの米の旨味を両立しているのが特徴です。

純米大吟醸酒

大吟醸酒のなかで、醸造アルコールを添加せず米・米こうじ・水のみを原料として造られたものが純米大吟醸酒です。大吟醸酒は吟醸酒のうち精米歩合50%以下の白米を原料とし、固有の香味及び色沢が特に良好なものを指します。玄米の50%以上を削り落とすことで雑味のもととなる成分が大幅に取り除かれ、繊細でフルーティーな香りとなめらかな口当たりが生まれます。純米酒のカテゴリーのなかで最も手間と原料コストがかかるため、価格帯も高くなる傾向にあります。

純米酒の楽しみ方

純米酒は温度を変えることで味わいが大きく変化する日本酒です。同じ銘柄でも冷酒・常温・燗酒と温度を変えれば、香りの立ち方や旨味の感じ方が明確に変わります。一本で複数の楽しみ方ができる点こそ、純米酒の大きな強みです。

純米酒を初めて飲むなら、特別純米酒を常温でそのまま飲んでみるのがおすすめです。純米酒らしい米の旨味がしっかり感じられつつ、雑味が抑えられて飲みやすいものが多いため、純米酒の魅力がストレートに伝わります。

そこから好みに合わせて広げていくと、純米酒の幅の広さが見えてきます。どっしりとした旨味やコクが好みなら、精米歩合70〜80%台の純米酒を試してみてください。米の外側の成分が多く残るため、旨味やコクが強く出ます。このタイプはぬる燗〜上燗(40〜45℃)に温めると味わいがさらにふくらみ、冷やで飲むときとはまるで違う表情を見せてくれます。温めることでアミノ酸や有機酸が引き立ち、酸味が丸くなって後味に米の甘みと旨味が長く残ります。燗酒は純米酒の楽しみ方のなかでも特に試してほしい飲み方です。

逆にフルーティーな香りを楽しみたいなら、純米吟醸酒や純米大吟醸酒が向いています。15℃前後のやや冷たい温度で飲むと吟醸香が最も活き、冷やしすぎると香りが閉じてしまうので、冷蔵庫から出して少し置いたくらいがちょうどいい温度です。ワイングラスに注ぐと香りが広がりやすく、吟醸香をより楽しめます。

食事と合わせるなら、純米酒か特別純米酒が使いやすいです。米の旨味が出汁や醤油ベースの味付けと自然に調和するため、和食全般との相性が良く、特に焼き魚、煮物、鍋料理などとは鉄板の組み合わせです。燗にすると味の角が取れて料理に寄り添いやすくなるので、料理と酒どちらも楽しみたい場面ではぬる燗〜上燗がバランスを取りやすいでしょう。バターやチーズを使った料理にも意外と合い、純米酒に含まれるアミノ酸がチーズの旨味成分と重なるため、ワインとは異なる方向性のペアリングが成り立ちます。

焼き魚と煮物が並ぶ和食のテーブルに純米酒の猪口が寄り添う夕食の情景

まとめ

純米酒は醸造アルコールを添加せず、米・米こうじ・水のみで造られる日本酒です。醸造アルコールを加えないことでアミノ酸が薄まらずに残り、濃醇で厚みのある味わいが生まれます。精米歩合の違いによって、米の旨味とコクが豊かな純米酒からフルーティーで繊細な純米大吟醸酒まで4つの分類があり、温度帯や料理との組み合わせでさらに表情が広がります。どっしりした旨味を燗酒で楽しむもよし、吟醸香を冷酒で堪能するもよし、ぜひ好みの飲み方で純米酒の魅力を味わってみてください。他の日本酒の種類も知りたい方は「特定名称酒で知る日本酒の種類」をご覧ください。