スパークリングワインとは

スパークリングワインは、炭酸ガスを含んだ発泡性のワインの総称です。一方、泡のないワインはスティル(非発泡)ワインと呼ばれ、赤・白・ロゼといった色の分類とはまた別の軸で区別されます。スパークリングワインの泡は、発酵で生まれた二酸化炭素がワインに溶け込むことで生まれます。スパークリングワインにも白・ロゼ・赤があり、味わいも辛口から甘口まで多様なスタイルが存在します。

スパークリングワインの歴史は17世紀のフランス・シャンパーニュ地方に遡ります。修道士のドン・ピエール・ペリニヨンがコルク栓をしたワインを瓶内で発酵させてしまったことがきっかけとされ、この偶然から生まれた発泡性ワインはやがて宮廷で人気を集めました。ペリニヨンはその後、異なる畑のぶどうをブレンドする手法や圧搾技術の改良など、現在のシャンパーニュ製法の基礎を築き、「シャンパーニュの父」と呼ばれています。

発泡の強さはガス圧で分類されます。一般的にガス圧が3気圧以上のものをスパークリングワイン、1〜2.5気圧のものをセミスパークリングワイン(弱発泡性)と呼びます。シャンパーニュやカヴァなど代表的な銘柄のガス圧は5〜6気圧に達し、グラスに注いだ瞬間に細かな泡が立ち上るのが特徴です。

スパークリングワインの製法

スパークリングワインの個性を決めるのは、泡をどうやって生み出すかという製法の違いです。発酵で生まれる炭酸ガスをどう閉じ込めるかで、泡のきめ細かさや香りの複雑さ、味わいの方向性が大きく変わります。

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製法別名発酵の場所仕上がりの傾向
トラディショナル方式瓶内二次発酵・シャンパン方式瓶の中きめ細かい泡、パンやビスケットの香り、複雑で奥深い味わい
シャルマ方式タンク方式密閉タンクの中フレッシュな果実味、軽やかで飲みやすい味わい
トランスファー方式瓶内発酵+移し替え瓶→タンク→瓶瓶内方式に近い複雑さを持ちつつ安定した品質
アンセストラル方式ペティアン・ナチュレル一次発酵の延長穏やかな泡、にごりを含んだ素朴で自然な味わい
炭酸ガス注入方式カーボネーション方式ガスを直接注入泡が大きめで気が抜けやすい、ベースワインの味わいがそのまま残る

トラディショナル方式はシャンパーニュをはじめとする高品質帯の銘柄が採用しており、最も手間と時間がかかる製法です。瓶内でゆっくりと二次発酵が進むことで炭酸ガスがワインにきめ細かく溶け込み、クリーミーな泡が生まれます。さらに澱との長期接触によって味わいにまろやかさと複雑な香りが加わります。

シャルマ方式はプロセッコなど、ぶどう品種の香りを前面に出したいワインに多く採用されています。大量生産がしやすく価格も抑えやすいため、カジュアルに楽しめるスパークリングの主流となっています。

トランスファー方式は、瓶内で二次発酵させたあとワインを一度タンクに移してまとめて澱を取り除く方法で、トラディショナル方式の品質と大量生産の効率を両立できます。ドイツのゼクトの一部でこの製法が使われています。

アンセストラル方式はトラディショナル方式が生まれる以前から存在する最も古い製法です。ペティアン・ナチュレル(通称ペット・ナット)の名称で近年のナチュラルワイン人気とともに再注目されています。

炭酸ガス注入方式は最もコストを抑えやすい製法で、気軽に楽しめるカジュアルなスパークリングワインに使われます。炭酸飲料と同じ要領でガスを注入するため、発酵による製法とは泡の性質が異なります。

ボトルからグラスへ注がれるスパークリングワインの流れと立ち上る金色の泡

スパークリングワインの味わいの特徴

スパークリングワインの味わいを知るうえで重要なのが、ドサージュと呼ばれる糖分調整で決まる甘辛度です。

スパークリングワインは炭酸ガスの影響で甘さを感じにくく、酸味が際立ちやすくなります。そのため、スティルワインと同じ残糖量でもより辛口に感じるのが特徴です。この特性を踏まえて、二次発酵後に糖分を補充する「ドサージュ」という工程で甘辛度が調整されます。EUの規則では、最終的な残糖量に応じて次のように表示が定められています。

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表示残糖量(g/L)味わいの印象
ブリュット・ナチュール3未満非常に辛口、シャープな味わい
エクストラ・ブリュット0〜6きわめて辛口
ブリュット6〜12辛口、すっきりとバランスの取れた味わい
エクストラ・セック(ドライ)12〜17やや辛口、わずかに甘みを感じる
セック(ドライ)17〜32中辛口
ドゥミ・セック32〜50中甘口
ドゥー50超甘口、デザート向き

市販のスパークリングワインで最も流通量が多いのはブリュットです。食中酒として万能に使えるバランスなので、初めて買うならブリュットを選ぶと外しません。デザートに合わせたい時だけドゥミ・セックやドゥーを選ぶ、という使い分けで十分です。

代表的なスパークリングワインの産地と種類

スパークリングワインは製法で味わいが大きく変わりますが、産地ごとに製法や品種の規定が決まっているため、産地名がそのまま味わいの目安になります。代表的な7産地を比較します。

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名称産地製法味わいの傾向
シャンパーニュフランス・シャンパーニュ地方トラディショナル方式きめ細かい泡、パンやビスケットの複雑な香り
クレマンフランス(シャンパーニュ地方以外)トラディショナル方式シャンパーニュに近い複雑さ、産地ごとに個性
カヴァスペイン・カタルーニャ中心トラディショナル方式果実感がありすっきりした飲み口
プロセッコイタリア・ヴェネトシャルマ方式華やかな果実味、軽快でカジュアル
フランチャコルタイタリア・ロンバルディアトラディショナル方式きめ細かい泡、繊細で奥深い味わい
アスティ(アスティ・スプマンテ)イタリア・ピエモンテアスティ方式甘口、低アルコール、マスカットの華やかな香り
ゼクトドイツシャルマまたは瓶内発酵高い酸味、華やかなリースリングの香り

シャンパーニュはAOC規定により品種・製法・熟成期間が厳格に定められています。許可品種は7種ですが、実際に使われるのはほぼシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエの3品種です。最低15ヶ月の熟成が義務づけられており、石灰質土壌がもたらすミネラル感も品質の背景にあります。

クレマンはシャンパーニュ地方以外のフランス各地で造られています。アルザス、ロワール、ブルゴーニュなど産地ごとに使う品種が異なり、それぞれの地域の個性が反映されます。シャンパーニュより手頃な価格で瓶内二次発酵の味わいを楽しめる存在です。

カヴァはスペインのカタルーニャ地方を中心に造られています。土着品種のマカベオ、チャレッロ、パレリャーダが使われ、手頃な価格帯で瓶内二次発酵の味わいが楽しめることから、日本でも広く流通しています。

プロセッコは近年世界で最も消費量を伸ばしているスパークリングです。ぶどう品種グレラを主体に造られ、手頃な価格で日常的に楽しめる銘柄として世界中で人気があります。

フランチャコルタはイタリア・ロンバルディア州で造られる高級スパークリングです。シャルドネやピノ・ネロが主要品種で、シャンパーニュより長い最低18ヶ月の熟成が規定されています。イタリアのスパークリングワインの最高峰とされていますが、生産量が少なく国外ではまだ知名度が高くありません。

アスティはイタリア・ピエモンテ州のモスカート・ビアンコから造られる甘口のスパークリングです。一次発酵のみで仕上げるため、ぶどう由来の甘さがそのまま残ります。アルコール度数が低く、ワインを飲み慣れていない方にも親しみやすい銘柄です。

ゼクトはドイツのスパークリングワインの総称です。ドイツは世界有数のスパークリングワイン消費国で、国内生産量の大半が国内で消費されています。リースリングを主体としたものが代表的で、この品種特有の高い酸が泡と合わさることで爽快な飲み口になります。

冷えたスパークリングワインのグラスから立ち上る細かな泡とビストロの暖色照明

スパークリングワインの楽しみ方

スパークリングワインを飲む際は、チューリップ型のグラスが適しています。フルート型も定番ですが、チューリップ型の方がボウルにふくらみがあるため、泡立ちを保ちつつ香りをしっかり引き出せます。飲む温度はしっかり冷やすのが基本で、辛口は6〜8℃、シャンパーニュのような複雑なタイプは8〜12℃が目安です。

スパークリングワインはまずよく冷やした状態で一口飲んでみるのがおすすめです。冷たい状態では泡がきめ細かく持続し、酸味もシャープに感じられます。開栓は音を立てずにコルクを押さえながら瓶の方をゆっくり回すと、ガス圧が徐々に抜けて静かに開きます。勢いよく抜くと泡と香りを一気に逃してしまうため、避けたい開け方です。

スパークリングワイン初心者には、プロセッコやカヴァなど手頃な価格帯の辛口から始めるのがおすすめです。泡が口の中の油分を洗い流し、酸味が料理の味を引き締めてくれるので、揚げ物や脂の乗った料理と合わせるとスパークリングワインならではの相性のよさを実感できるはずです。

まとめ

スパークリングワインの味わいを左右するのは、製法の違いと、ドサージュによって調整される甘辛度です。瓶内でゆっくり二次発酵させるトラディショナル方式はきめ細かい泡と奥深い味わいを、密閉タンクで仕上げるシャルマ方式は軽快で果実味豊かな味わいを生み出します。ブリュットを中心とした辛口が市場の主流で、食中酒として幅広い料理に合わせやすいのも魅力です。産地名を道しるべにしながら多彩なスパークリングワインの世界をぜひ楽しんでみてください。他のワインの種類も知りたい方は「ワインの種類を知る〜色と製法で異なる味わい〜」をご覧ください。